2008年12月27日
平成14(2002)年に公開された、小泉尭史監督による『阿弥陀堂だより』という映画があります。
南木佳士の同名小説を小泉監督が脚色した作品です。小泉監督は寺尾聰主演の時代劇映画『雨あがる』などでも知られる監督ですが、この『阿弥陀堂だより』も同じく寺尾聰主演で、樋口可南子、北林谷栄、香川京子、田村高廣、小西真奈美などが共演していて、しみじみと心温まるいい映画となっています。
この映画に出てくる「阿弥陀堂」が、なんとなく願成寺の「阿弥陀堂」に似ているのです。
映画に出てくる「阿弥陀堂」は、映画のセットとして建てられたもので、今も長野県飯山市の山あいにそのままあるそうです。願成寺の「阿弥陀堂」はセットではなくて、間違いなく本物です。
この「阿弥陀堂」に一人で住む96歳の「お梅ばあさん」を、撮影当時91歳だった北林谷栄が演じました。映画の中では、難病に苦しむ少女や、都会での生活に傷ついて帰郷した夫婦が、お梅ばあさんとふれあい、次第に自分を取り戻していきます。
そのお梅ばあさんの言葉が村の広報誌に「阿弥陀堂だより」として載ります。
―阿弥陀堂だより―
「目先のことに
とらわれるなと
世間では言われていますが
春になれば ナス インゲン
キュウリなど
次から次へ苗を植え
水をやり
そういうふうに
目先のことばかり考えていたら
知らぬ間に
96歳になっていました。
目先しか見えなかったので
よそ見をして
心配事を増やさなかったのが
よかったのでしょうか
それが長寿の
ひけつかもしれません。」
「雪が降ると
山と里の境がなくなり
どこも白一色になります。
山の奥にある
御先祖様たちの住むあの世と
里のこの世との境がなくなって
どちらがどちらだかわからなくなるのが
冬です。
春、夏、秋、冬
はっきりしていた山と里の境が
少しずつ消えていき
一年がめぐります。
人の一生と同じなのだと
この歳にしてしみじみ感じます。」
映画『阿弥陀堂だより』の中の「阿弥陀堂」は、別所町に実在しているのではないかと、思えてならないのです。