和喜蔵顕彰事業の紹介


和喜蔵顕彰事業略史
  

1956(昭和31年)

 8月23日、和喜蔵の菩提寺である加悦町実相寺において、初めて「細井和喜蔵さんを偲ぶ会」が開かれた。地元の郷土史家沢村秀夫氏、太田典礼氏、加悦町長細井直義氏をはじめ15人ほどの発起人による呼びかけであった。この席で、「和喜蔵を偲ぶ夕」を開くことと、「和喜蔵顕彰碑」を建てることが決議された。

1956〜1957(昭和32年)

 「偲ぶ会」の決議を実行するため、「世話人会」が作られ事業推進にあたった。
 顕彰碑設立のため、全国委員藤森成吉氏ほか26名、地方委員蜷川虎三氏(京都府知事)ほか44名、地元委員細井直義氏ほか47名を委嘱、全国的な「細井和喜蔵顕彰碑設立委員会」が発足した。
 「細井和喜蔵を偲ぶ夕」が、遺友山田清三郎氏、和喜蔵未亡人高井としを氏を招いて開かれ、約900名もの人が参加した。
 碑は、東京青山墓地にある「解放運動無名戦士の墓」の石碑と似たものが地元滝川に横たわる自然石の中から選ばれた。建てる場所は、和喜蔵の生家の隣の駒田の丘にある鬼子母神の境内を借りることになった。
 題字は「女工哀史細井和喜蔵碑」と決まり、藤森成吉氏の筆によって書かれた。
 熱心な訴えによって全国からカンパが寄せられ、その額は当時のお金で29万円に上った。その中には全繊同盟の女工さんたちが1人1円カンパで集めた3万円も含まれていた。

1958(昭和33)年

 11月18日細井和喜蔵顕彰碑除幕式が、和喜蔵の恩師で女工哀史記念会長の藤森成吉氏、和喜蔵未亡人の高井としを氏、遺友渋谷定輔氏、加悦町長細井直義氏ほか多数の参加を得て、盛大に開かれた。
 除幕式を終えると、碑の裏側にはめ込む碑文を刻んだ銅板を作るお金がなくなり、引き続いてカンパを訴えることになった。この結果8千円の残金が出来たので、それを顕彰碑設立運動の事務局を担当していた加悦谷地方勤労者協議会に託し、以後毎年同時期に「細井和喜蔵碑前祭」を行うこととした。以来、今日まで欠かさず毎年11月の終りの土曜日に開催され、京都の河上肇の「河上祭」、山城の山本宣冶の「山宣祭」と並ぶ京都の三大労働祭のひとつとなっている。

1960(昭和35)年

 顕彰碑の裏側に藤森成吉氏の碑文を刻んだ銅板をはめ込んだ。

1968(昭和43)年

 この年から「碑前祭」の「前夜祭」の一環として、地元加悦谷高校演劇部OBの青年などを中心に、和喜蔵の戯曲や小説を脚色したものを上演する取り組みが始まった。こうした中で、吉祥寺の副住職(当時)であった中島光明氏が中心となってサークル「カヤ・アートカンパニー(K・A・C)」が誕生し、以後12年間にわたって和喜蔵の演劇を上演することとなる。
 実際に上演されたことはないと思われる和喜蔵の作品を、出身地加悦谷の青年が、加悦谷の方言で上演するという画期的な取り組みであった。

         
 この年は、小説『奴隷』の一部を脚色した『親』を上演した。
 以下前夜祭での上演について、その経過を記す。

1969(昭和44)年

演劇『江冶のめざめ』上演 (小説『奴隷』より脚色)

1970(昭和45)年

演劇『母の死』上演 (同上)

1971(昭和46)年

演劇『女工の死』上演 (同上)

1972(昭和47)年

演劇『親』上演 (同上)

1973(昭和48)年

高井としを氏を招き、「細井和喜蔵と私たち」と題して講演会を実施
演劇『無限の鐘〜プロローグ〜』上演 (戯曲)
(この年、加悦谷の史実に基づいたK・A・Cのオリジナル戯曲『百姓一揆』も上演された。)

1974(昭和49)年

演劇『百姓一揆』上演(塩見裕 作) *前年と同じ作品

1975(昭和50)年

演劇『親』上演 (68年、72年と同様)
演劇『無限の鐘』上演 (戯曲)

1976(昭和51)年

演劇『哀の資母』上演 (小説『奴隷』より脚色)

1977(昭和52)年

演劇『乞食の歌』上演 (戯曲 滝上忠作)

1978(昭和53)年

演劇『発明恐怖の頃』上演 (戯曲 和喜蔵作)

1979(昭和54)年

この年は「前夜祭」に映画『ああ 野麦峠』を上映した。以後、演劇の上演はしていない。

1985(昭和60)年

和喜蔵没後60年記念行事として、和喜蔵の研究家八木康敞氏を招いて講演会を実施。

1995(平成 7)年

和喜蔵没後70年

1997(平成 9)年

和喜蔵生誕100年記念行事として宝光井顕雅氏を招き、講演会を実施。
生誕100年を期に「細井和喜蔵を顕彰する会ー準備会ー」を作り、来年に向けて呼びかけをすることを確認。

1998(平成10)年

「細井和喜蔵を顕彰する会」を正式に発足させる。
      

1999(平成11)年

6月 大阪いしずえ会 約40名来訪、顕彰碑見学。「顕彰する会」役員が案内
11月 愛知いしずえ会 約30名来訪、顕彰碑見学。     同上

 (参考文献 「和喜蔵顕彰覚え書」杉本利一 
             『季刊 郷土と美術』1986年10月秋季号 所収)


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